半導体 尖端覇権の興亡

『半導体 尖端覇権の興亡』

2026年5月、講談社

私が初めて半導体について取材をしたのは1997年4月、朝日新聞東京本社経済部の電機業界担当記者に赴任して間もないころでした。ちょうど世界半導体会議なるものが開かれ、それを短い記事にする仕事を仰せつかったのです。当時すでにバブル経済は崩壊していましたが、日本の電機産業にはまだ「電子立国」ともてはやされていた時代の余韻が強く残っていました。平面テレビ、家庭用ゲーム機、DVD。まだ日本発の製品が世界市場を席捲していました。それが、2000年に入ったあたりから、まるで坂道を転げ落ちるように凋落していったのです。シャープが台湾の鴻海精密工業に買収され、エルピーダは経営破綻してアメリカのマイクロンの傘下に入りました。東芝の凋落は拙著『東芝の悲劇』で書いた通りです。日立製作所もソニーもパナソニックも、いまやエレクトロニクスの会社という感じはしなくなってしまいました。 日本の凋落とともに躍進したのが韓国であり、台湾であり、そして中国でした。私たちは、自分たちより〝格下〟と見下していたものたちにとってかわられてしまったのです。日本メーカーの下請けだった台湾のTSMCを5000億円もの補助金(つまりは税金)を投じて熊本に誘致するなんて、かつてなら想像できないことでした。外国の会社に税金を投入するくらいならば、もっと日本の会社を強化するために補助策を講じたらいいのに。誰もがそう思ったことでしょう。 そうして出現した尖端半導体メーカー、ラピダス。「日の丸」を背負ったこの官製ベンチャーに湯水のように兆円規模の税金が投じられようとしています。 果たしてその成否は――。

半導体 尖端覇権の興亡

『半導体 尖端覇権の興亡』
2026年5月、講談社

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