朝日新聞夕刊「惜別」欄に、戦後最強の経済記者だった大塚将司さんを追悼する記事を書きました。

 大塚将司さんは、戦後最大級の経済事件といわれたイトマン事件をスクープしたことで知られます。ほかにも大型倒産だったリッカーの破綻、自民党の派閥の領袖がオーナーだった三光汽船の破綻、そして三菱銀行と東京銀行の合併などスクープ合戦で連戦連勝された方です。その赫奕たる戦果は氏の著書『スクープ』に詳しく書かれています。

 私はAERA編集部勤務中の2006年、日経社員のインサイダー事件など日本経済新聞社のスキャンダル取材を通じて親しくなりました。10人のジャーナリスト、ノンフィクション作家と対談した拙著『ジャーナリズムの現場から』を編む際には、絶対に欠かせないと思ったのが大塚さんでした。勤務先の朝日新聞社をはじめ、新聞社や放送局には経営体制に不満を抱いて週刊誌などに匿名でたれこむ人は少なくないですが、実名で公然と経営トップに反旗を翻したのは大塚さんしかいません。そういう点でもワン&オンリーな稀有な存在だったのです。私が2014年の一連の朝日新聞の問題の後、当時の経営陣を追及することに立ち上がった際には大塚さんの取り組みは大変参考になりましたし、私たちが旗揚げした戦う労働組合の勉強会には講師としてお招きしたこともあります。

 2024年9月に福岡から東京に戻ってくると、いの一番に歓迎会を開催してくれて、その席で「次の仕事を手伝ってほしい」と頼まれました。大塚さんは、これまで手書きだったノートやメモを全部ワープロに打ち直してパソコンで検索可能にし、過去の取材データを取り出せるようにしていました。それをもとにバブル崩壊に対して当時の大蔵省や日銀がいかに拱手傍観し右往左往したのか、詳細なノンフィクションを書きおろそうとしていました。その話を私に持ちかけた直後に病に倒れ、助力できなかったのがとても残念です。

 朝日をはじめ(私が書きました)、毎日や東京、産経にも訃報が載りましたが、日経は黙殺。このへんが日経の度量の小さいところです。

(惜別)大塚将司さん ジャーナリスト・元日本経済新聞記者:朝日新聞

TOP